「口内炎」は、口の中でよく起こるトラブルの一つです。
一度発症すると治りにくく、食事の際に食べ物が触れるたびに激しい痛みが走る経験をしたことがある方も多いでしょう。
中には反復して発生する場合もあります。
このため、今回は漢方医学の視点から「口内炎の原因」と、内側から改善できる漢方薬、さらに口内炎におすすめの食材をご紹介します。
口内炎とは
口内炎は口腔内の粘膜に炎症が起こる一般的な状態です。頬や唇の内側、喉、舌など、口内のあらゆる粘膜に現れ、痛みや不快感によって生活の質が低下することがあります。
口内炎ができる原因
なぜ体内に「過剰な熱」が蓄積されるのか、それは非常に重要な要素です。
実際、過剰な熱の蓄積が口内炎の真の原因となります。口内炎を効果的に改善するためには、その原因を特定し、解決することが重要です。
飲みすぎや食べすぎ
食べ過ぎは、消化器官である胃腸を過度に負担することになります。運動によって体が熱くなるように、胃腸も過度の活動でオーバーヒート状態になり、余分な熱がたまりやすくなります。
熱は上昇する性質を持っているため、胃腸に蓄積された余分な熱は食道を通じて口腔粘膜に伝わりやすくなり、それが口内の炎症や損傷、口内炎の原因となると漢方では考えられています。食べ過ぎと同様に、飲酒の過度な摂取も注意が必要です。
飲みすぎは、胃腸と同様に解毒器官である肝臓を過剰に働かせてしまいます。また、漢方医学では、日本酒やワインよりも焼酎やウイスキーの方が体を温める性質があり、飲みすぎは体内に過剰な熱を蓄積する原因とされています。
「飲み過ぎた翌日に胃が不快になる」「気分が悪くなる」「胸焼けがする」「胃が痛む」などの自覚症状がある場合、飲みすぎによって体内に余分な熱がたまっている可能性がありますので、注意が必要です。
脂っこいものや辛い食事を摂りすぎる
生姜、唐辛子、胡椒、ニンニクなどの辛味の強い食材は、体を温める効果があると言われており、食べ過ぎると体内に過剰な熱が蓄積される可能性があります。
また、消化に難しい脂っこい食事や高タンパクな食事も、胃腸に負担をかけるため、余分な熱が体内にこもりやすく、口内炎の原因となる可能性があります。
ストレス
驚くことに、口内炎の原因の一つはストレスです。過度のイライラや怒りは熱を伴いやすく、体内に余分な熱をためる原因となると漢方では考えられています。
特にストレスは舌と深い関係があるとされており、口内炎だけでなく舌にも影響を及ぼし、口内炎の発生や舌の赤み、ヒリヒリ感などの症状が起こりやすいと言われています。
風邪や熱性の慢性疾患
風邪による体温上昇も、体内に過剰な熱を蓄積させる要因の一つです。風邪の際に口内炎が発生しやすいのはこのためです。
さらに、持続的な発熱や炎症といった熱を伴う慢性的な疾患も、過剰な熱を体内にため込みやすく、口内炎の発生原因となります。
身体の弱りや慢性疲労
漢方医学では、持続的な疲労や慢性的な不眠、体力の低下などが体内に過剰な熱を蓄積させる要因になると考えられています。
同様に、慢性的な胃腸の弱りも過剰な熱が胃腸にたまる原因とされています。
疲労がたまると口内炎が発生しやすくなる、午後に微熱が出る、手足に熱を感じるといった自覚症状がある方は注意が必要です。
口内炎ができる原因【漢方の考え】
西洋医学では、口内炎の原因としてストレスや疲労、栄養不足、物理的な刺激、ウイルス感染などさまざまな要因が考えられています。
一方、漢方医学では、過剰な熱が体内に蓄積されることによって口内炎が引き起こされると考えられています。この過剰な熱が口内の粘膜に影響を与え、炎症が生じることで口内炎が発生するのです。
口内炎に効果的な漢方薬は『黄連解毒湯』
口内炎が頻繁に再発し、治りにくいという方には、「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」という漢方薬がおすすめです。
黄連解毒湯は、黄連(おうれん)、黄芩(おうぎん)、黄柏(おうはく)、山梔子(さんしし)といった4つの生薬から成る漢方薬です。これらの生薬は苦味健胃薬とも呼ばれ、昔から日本の家庭で一般的な常備薬として親しまれてきました。
黄連解毒湯は、体内にたまった余分な熱を冷まし、炎症を鎮める作用があります。その結果、口内炎や皮膚炎などの症状を緩和する効果が期待できます。口内炎だけでなく、胃炎や二日酔いにも効果があり、幅広く活用される漢方薬です。ぜひ一度試してみてください。
口内炎に効く漢方薬
強い痛みを伴う口内炎におすすめの漢方薬
体力によって口内の細菌との闘いが激しくなり、赤くて痛い口内炎が頻発することが特徴です。このような口内炎には、黄連(オウレン)や黄芩(オウゴン)といった抗炎症作用の強い成分を含む黄連解毒湯や三黄瀉心湯がおすすめです。
黄連解毒湯はファーストチョイスとして考えられ、便秘もある場合は三黄瀉心湯が適しています。辛いものが好きで内部に熱がこもりやすく、顔が赤くなりやすい青年期から壮年期の方に口内炎に効果的です。
痛みが弱い口内炎におすすめの漢方薬
病後などの倦怠感を伴う口内炎は、炎症が比較的軽く、痛みもありませんが、白く小さな口内炎が多数できる傾向があります。このような口内炎には、人参を含む漢方薬が利用されます。
風邪の後など、消化器系が弱まり口内炎が生じることがよくあります。このような場合には、消化器系を補強するための補中益気湯などの補助療法が選択されることがあります。
唾液の分泌が少ない高齢者や冷えを伴う場合には、人参養栄湯が選択されることがあります。また、食欲不振が主な症状の場合には六君子湯が選択されることがあります。
口内炎におすすめの食材
口内炎が発生した場合、カラダ内の余分な熱を和らげる効果がある食材がおすすめです。これらの食材は体温を下げ、口内炎の改善をサポートしてくれます。以下では、口内炎に特に適した食材を3つご紹介します。
柿
漢方では、柿にはカラダの過剰な熱を冷ます効果があるだけでなく、お酒の解毒を促進する作用もあるとされています。口内炎がお酒の飲みすぎによって発生した場合には特におすすめの食材です。
みょうが
漢方では、みょうがにはカラダの過剰な熱を冷ます効果だけでなく、解毒や腫れの改善を促す効果もあるとされ、口内炎の治療に古くから重宝されてきました。刻んでお味噌汁に入れると、簡単に美味しく摂取できますよ。
タコ
漢方では、タコにはカラダの過剰な熱を穏やかに冷やす効果があるとされています。また、タコにはカラダを元気にする効果や栄養を補う効果もあり、疲れたり体力が低下したりしたとき、風邪などで体力を消耗したときに生じやすい口内炎に特におすすめです。
口内炎を改善するためには、口内炎の原因を解決すると同時に、カラダに蓄積した余分な熱を冷やすことが非常に重要です。
コメント