女性にとって、のぼせは意外と多い悩みですよね。経験したことがある方も多いはずです。
のぼせの原因はさまざまで、改善方法もそれによって異なります。
また、繰り返すのぼせの原因のほとんどは体質に関連していると言われています。
今回は、漢方の視点からのぼせの原因とおすすめの漢方薬についてご紹介します。
のぼせとは?
「のぼせ」とは、頭や顔などに異常な熱感を感じる状態を指します。
ただ熱感だけでなく、頭がぼーっとする感覚、頭痛、顔のほてり、体のほてり、発汗、鼻血、動悸など、複数の症状が現れることもあります。
特に更年期や卵巣摘出手術を受けた女性の約6割が経験すると言われています。
のぼせの頻度は一日に数回から1~2時間に1回と変動し、緊張したり感情が高ぶったりした時に起こりやすいです。
睡眠中にも発生するため、夜中に汗をかいて目が覚めることもあります。
さらに、現代女性には手足が冷えているにもかかわらず、顔だけが熱くなる「冷えのぼせ」という症状も見られます。
のぼせの原因
のぼせとは、体がカーッと熱くなったり、頭がぼーっとする症状を指します。
この症状は、自律神経の乱れによって引き起こされ、一種の自律神経失調症状と言えます。
自律神経は、血管の収縮や拡張をコントロールしています。
- 自律神経や女性ホルモンの乱れによるもの
- 病気によるもの
自律神経や女性ホルモンの乱れによるもの
自律神経と女性ホルモンは、同じ脳の視床下部で調整されています。
そのため、両者は密接な関係にあります。女性ホルモンの分泌が乱れると、自律神経も乱れてしまうことがあります。
更年期のようなホルモン変動が大きい時期はもちろん、思春期、妊娠中、産後、月経前などでも、のぼせの症状が起こりやすいと言われています。
病気によるもの
のぼせが病気の症状として現れるケースには気を付けなければなりません。
甲状腺機能亢進症の一種である「バセドウ病」や高血圧、心臓病、糖尿病などでも、のぼせや多汗が起こることがあります。
そのため、気になる症状が2週間以上続く場合は、医師に相談して原因を確認することが大切です。
さらに、ストレス、過労、睡眠不足、冷え、運動不足などの生活習慣も、のぼせの引き金になります。
症状が繰り返す場合は、ライフスタイルを見直すことが必要です。
女性ホルモンの変化が引き起こすのぼせとは?
更年期において、女性ホルモンのバランスが乱れることが、のぼせの原因となります。
特にエストロゲンの減少が自律神経の調節に影響し、体温調節機能を乱します。これが血管の拡張と収縮に関わり、体内の血液循環を乱し、のぼせを引き起こす要因となります。
のぼせは体温調節の異常な変動に関連しており、外部の熱や寒さに敏感に反応します。
また、ストレスや免疫力の低下も、のぼせの発生を増加させます。
心身の健康とバランスを保つことが重要です。
のぼせの症状は体内の熱の調節に関連しており、熱中症や風邪の症状と似ていますが、その根本的な原因は女性ホルモンの変化にあります。
そのため、漢方薬などを通じて、女性ホルモンのバランスを整え、自律神経の調節機能をサポートすることが、のぼせ対策の一つとなります。
- 女性ホルモンの分泌が不安定になる
- 脳の視床下部や脳下垂体へ伝達
- 脳の命令に乱れが生じる
- 自律神経が乱れる
頭がぼーっとするのぼせの原因
のぼせで頭がぼーっとすることは、体の不調やストレスの影響で引き起こされることがあります。
その原因には、以下のような要因が挙げられます。
- 血行不良
- 自律神経の乱れ
血行不良
手や足が冷える、目が疲れる、肩こりや頭痛などの症状がある場合、血液の流れが悪くなっている可能性が考えられます。
血液は脳に酸素や栄養を供給する役割を果たしているため、血行不良が起こると脳の機能が低下し、頭がぼーっとする原因になります。
自律神経の乱れ
自律神経は心身の調和を整える重要な役割を果たしています。
しかし、ストレスや睡眠不足などの要因で乱れると、血圧や心拍数などの生体機能に影響を及ぼします。
自律神経の乱れは、頭がぼーっとするだけでなく、めまいや動悸、発汗などの症状も引き起こす可能性があります。
のぼせで頭がぼーっとする時の対策
のぼせで頭がぼーっとする際の対策としては、次のようなものが考えられます。
- 自律神経を整える
- 血行を良くする
- 睡眠を充分に取る
自律神経を整える
ストレスをためないためには、リラックスする時間を作ることが重要です。
深呼吸や瞑想、好きな音楽や香りに癒されることもおすすめです。
また、規則正しい生活習慣を心がけることも大切です。
血行を良くする
血液の流れを改善するために、適度な運動やストレッチ、マッサージなどを取り入れましょう。
また、温かい飲み物や食べ物、入浴などで体を温めることも効果的です。
睡眠を充分に取る
睡眠時間は個人差がありますが、一般的には6~8時間程度が適切です。
寝る前には刺激的なものを避け、暗くて静かな環境でリラックスしましょう。
のぼせに効果的な漢方薬を選ぶ際には、原因や体質に合わせて検討することが重要です。
漢方薬は個人の状態によって効果が異なるため、専門家に相談するのが良いでしょう。
入浴中にのぼせやすい人の特徴
のぼせの原因の一つは入浴です。長時間の入浴は体の血圧に影響を与えることがあります。
入浴中、体は上半身が熱くなり、足や手は冷たく感じることがあります。
この状態では、脳の血流も上昇します。これがのぼせの主な原因の一つです。
お風呂でのぼせやすい場合は、入浴時間や水温に気を付ける必要があります。
適度な時間で温度の高すぎないお風呂を心掛けましょう。
また、入浴後に身体を急激に冷やすのも避け、ゆっくりと体温を調整しましょう。
血圧や血管の健康を維持することも重要です。
適切な食事や運動を通じて血圧を管理し、血液の流れをサポートしましょう。
また、水分摂取も大切です。入浴前後に水分を摂り、脱水症状になることを予防しましょう。
入浴中に頭が痛くなったり、めまいや吐き気がした場合は、すぐにお風呂から出ましょう。
また、手足がしびれたり、動かしにくくなった場合も同様です。
のぼせに悩む女性は、体の状態を注意深く見守り、適切なケアを行うことで症状の軽減や予防が可能です。
のぼせたときの応急処置
のぼせが発症した場合、上半身や顔・頭部の熱やほてりを冷やすことが必要です。
首や顔に冷たいタオルを当てることで、体温を下げることができます。
暑い場所にいるときは、涼しい場所に移動することも大切です。
野外にいる場合は、屋内に移動し、クーラーを使うのも効果的です。
のぼせは軽いものから重篤なものまで様々であり、最悪の場合は倒れてしまうこともあります。
そのため、のぼせの症状に気づいたら、早めに対処することが重要です。
のぼせの対処法や漢方薬の選択は、個人によって異なります。
体調や症状に応じて適切な方法を見つけることが重要です。
のぼせに悩む女性は、専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。
のぼせやすい人の体質|原因と漢方
のぼせを引き起こす体質には様々なタイプがあります。
個々のタイプによって、のぼせの具合や現れる症状に違いがあります。
自身の症状と照らし合わせて、自分ののぼせ体質をチェックしましょう。
そして、以下に4つの原因とそれに応じたおすすめの漢方薬をご紹介します。
- ストレス
- 加齢による「カラダの衰え」
- ホルモンバランスの「更年期」
のぼせ原因1:イライラの「ストレス」
- イライラしやすい
- 眠りが浅い
- 口が苦い
怒りでカーッとなると、興奮して顔が赤くなることがありますね。
漢方では、赤色は熱を表す色とされ、精神状態が乱れるとカラダに過剰な熱をため込みやすくなると考えられます。
気はカラダのエネルギーであり、熱の根源でもあります。
気の巡りが悪くなると気は停滞し、その停滞した気に余分な熱が集まりやすくなります。
熱を帯びた気は上半身に集まり、特に頭にたまって精神をかき乱すため、イライラや怒り、のぼせやほてりが起こりやすくなります。
このタイプの特徴は、顔の赤みやイライラ、怒りっぽさ、眠りが浅い、口が苦いなどの精神不安症状と共に、同時に現れることです。
のぼせ原因2:加齢による「カラダの衰え」
- 手のひらや足の裏がほてる
- 腰や膝がだるい
- 口やのどが乾く
漢方では、体の熱は「陰と陽のバランス」で調整されていると考えられています。
このバランスが崩れると、体の寒熱の調整も乱れるとされています。
体の「陰」の代表が「腎陰」であり、全ての陰の基本とされています。
腎陰は成長や生殖に不可欠であり、常に使われる一方で、食事や呼吸によって補充されます。
「腎陰」は加齢とともに減少し、老化現象として知られています。
腎陰が少なくなると、体を冷やす陰が不足し、体内に熱がこもりやすくなります。
その結果、慢性的なのぼせが起こりやすくなります。
この状態を「腎陰虚(じんいんきょ)」と呼びます。このタイプでは、のぼせだけでなく、手のひらや足の裏のほてり、耳鳴り、めまい、腰や膝のだるさ、口やのどの乾燥などの症状が見られることがあります。
のぼせ原因3:ホルモンバランスの「更年期」
- 突然、のぼせを感じる
- 手足が冷える
- 同時に発汗する
更年期における代表的な症状のひとつに「ホットフラッシュ」がありますが、これはホルモンの変化によって引き起こされるのぼせの一種です。
漢方医学では、更年期の症状には加齢による腎陰虚だけでなく、女性にとって重要な「衝脈」と「任脈」の不調が関係していると考えられています。
衝脈と任脈は体内を巡る経脈の一つで、女性の生理や妊娠に深く関わります。
腎の衰えにより腎陰が不足すると、衝脈や任脈の気血も不足し、生理の乱れが起こります。
これは生理的な現象ですが、衝脈や任脈の失調があると月経周期の乱れや更年期障害などが起こりやすくなります。
衝脈や任脈の気血が不足すると、腎陰虚が進行し、体内に熱がこもりやすくなります。
さらに、気の不足も進み、体内の陰と陽の両方が不足する「陰陽両虚」の状態になります。
陰陽両虚の場合、体温のコントロールが不安定になります。
頭の熱感や顔の赤み、発汗と同時に、四肢が冷えるなどの熱寒の入り交じった症状が現れやすくなります。
のぼせ原因4:血流の滞り「冷えのぼせ」
- 冷えのぼせ
- 生理痛・月経異常
- 肩がこる
足が冷えているのに上半身がのぼせる、お風呂に入るとすぐにのぼせるが、下半身は冷えている、暖房の効いた部屋にいるとのぼせて気分が悪くなる。
そんな症状が現れるのが血行不良による「のぼせ」です。
血の巡りと体温には密接な関係があります。
血行不良になると、下半身で血の巡りの滞りが起こりやすくなります。
このため、下半身は冷えやすくなり、逆に上半身は熱がこもりやすくなります。
この状態が続くと、体内で熱寒のバランスが乱れやすくなります。
漢方医学では、血行不良による状態を「瘀血(おけつ)」と呼んでいます。
このタイプでは、のぼせと同時に下半身の冷えを感じる「冷えのぼせ」が特徴です。
また、肩こりや頭痛、生理痛などの婦人科系の疾患や、下肢静脈瘤などのトラブルも起こりやすいと考えられています。
のぼせにおすすめの漢方薬は?
のぼせを根本から改善するには、まず体質を改善することが重要です。
体質の改善におすすめなのが漢方薬です。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
- 七物降下湯(しちもつこうかとう)
加味逍遙散(かみしょうようさん)
「加味逍遙散」は、ストレスや更年期に悩む人に効果的な漢方薬です。この漢方薬は、気の流れを整えつつ、余分な熱を冷ますことで、カラダのバランスを整えます。特に、交感神経が興奮した状態によるイライラや不眠症などの神経症状に効果を発揮します。自律神経を調整することで、のぼせやイライラを和らげ、血行を促進します。この漢方薬は、のぼせやイライラだけでなく、肩こりや疲労感、便秘なども改善します。女性特有の冷え症や虚弱体質、月経不順、更年期障害などにも効果があります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
「桂枝茯苓丸」は、血行不良による症状を改善する代表的な漢方薬です。この処方は、滞った血のめぐりを改善し、カラダ全体の流れを整えます。血行不良によるのぼせや足の冷え、肩こり、めまい、頭重などの症状に効果を発揮します。また、月経不順や更年期障害、肌トラブルにも有効です。この漢方薬は、カラダのバランスを整えることで、様々な不調を改善します。
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
「知柏地黄丸」は、腎の機能を強化し、同時に体内の熱を冷ますことで、のぼせやほてりを緩和する漢方薬です。特に加齢による腎の弱りや更年期ののぼせに効果的です。「知柏地黄丸」は腎の働きを改善し、排尿困難や頻尿、むくみなどにも効果があります。全身がほてり、口渇があるような腎の弱りが強いタイプにおすすめで、ストレスやイライラしやすい人には「加味逍遙散」が適しています。
七物降下湯(しちもつこうかとう)
「七物降下湯」は、血を補う基本処方である四物湯に3種類の生薬を加えた漢方薬です。高血圧の随伴症状の改善を目的に開発され、高血圧に伴うのぼせや肩こり、耳鳴り、頭重などに効果があります。血を補いながら気を補い、気血を充実させると同時に、余分な熱を冷ます効果があります。顔色が悪く疲れやすい、更年期やカラダの衰えを感じる方におすすめの漢方薬です。
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