新型コロナウイルス感染症の影響で、ストレスや不安を抱える人が増えています。
厚生労働省による調査でも、半数以上の人が不安を感じていると報告されています。ストレスは心身の不調につながり、特に不眠はよく現れる症状です。
眠りに悩んでいる場合は、漢方薬の試してみる価値があります。
本記事では、「不眠の東洋医学的な視点と、漢方薬の効果」について詳しく解説します。
ストレスや不眠に悩む方に役立つ情報が盛りだくさんです。
新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルス調査|厚生労働省
不眠症とは
不眠症とは、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などの睡眠問題があり、それによって日中に倦怠感や意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が現れる病気です。
不眠は一時的に経験することもありますが、通常は自然に改善されて再び良い眠りが得られるものです。ただし、慢性的な不眠症に陥ると、適切な治療を受けない限り回復が難しいとされています。
気逆(きぎゃく)タイプ
「気逆」とは、通常の気の流れと逆方向に流れる状態を指します。夜になると、私たちは眠りに入るために気の熱を鎮める必要があります。しかし、このタイプの場合、気の熱がうまく鎮められず、入眠が困難であり、眠りについても夜中に目が覚めやすい傾向があります。
気滞(きたい)タイプ
「気滞」とは、気の流れが円滑ではなく、エネルギーが滞っている状態を指します。この状態では、気分が重くなり、絶えず不安感を抱いたり、些細なことに敏感になったりして、入眠が困難になることがあります。
気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ
「気血両虚」とは、健康な睡眠を得るために必要な気と血が不足し、機能が低下している状態を指します。この状態では、「疲れなのに眠れない」「深い睡眠を得られない」といった症状がよく見られます。睡眠に必要なエネルギーが不足しているため、十分な休息を取ることが難しい状態と言えます。
良質な睡眠をとるためには心身のバランスを整えよう
東洋医学では、不眠症に対して「眠りそのもの」にアプローチするのではなく、「眠りを妨げる原因」を総合的に考慮したアプローチを取ります。
例えば、気の滞りが原因で眠れない場合は気の流れを促す処方を、イライラが原因で眠れない場合は気分を落ち着かせる処方を行います。
このように、不眠の背景に応じて薬を使用することが特徴であり、眠りを直接誘発するのではなく、「心身のバランスを整えて自然な形で質の高い睡眠に導く」ことを目指しています。
不眠症に用いられる代表的な漢方薬
黄連解毒湯 (おうれんげどくとう)
<のぼせやほてり、興奮を伴う不眠に効果的>
のぼせやほてりに悩まされ、イライラや興奮があって眠れないタイプの不眠におすすめです。中程度以上の体力を持つ方や頑強な体質の方に適しています。体の熱を冷まし、興奮を鎮める作用があり、円滑な入眠をサポートします。
柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう)
<ストレスによるイライラからくる不眠に>
ストレスや疲労などによって生じるイライラからくる不眠に効果的な処方です。気の滞りを改善し、体内にこもった熱を冷ましつつ、心を落ち着かせる作用があります。中程度以上の体力を持ち、仕事や人間関係などでイライラしやすく、心配事に悩まされる方や試験前の緊張によって眠れない方に適しています。
桂枝加竜骨牡蛎湯 (けいしかりゅうこつぼれいとう)
<神経過敏からくる不眠に>
「桂枝湯」を基にした処方に「竜骨」と「牡蛎」などを加え、体のバランスを整えます。これらの成分が協力して気と血の調和を促し、不安定な精神を落ち着かせます。常に不安で安定感を得られず、「些細なことに神経質になる」といった神経過敏型の不眠に効果的です。
加味帰脾湯 (かみひきひとう)
<不安や気分落ち込みによる不眠に>
血液の補給と気のめぐりを促すことにより、リラックスした状態を作り出し、不眠を改善します。体力が中程度以下でストレスによる不安感、気分の沈み込み、焦りなどからくる不眠に効果的な処方です。
抑肝散加陳皮半夏 (よくかんさんかちんぴはんげ)
<神経の高ぶりによる不眠に>
「抑肝散」と呼ばれる処方に「陳皮」「半夏」を組み合わせています。この処方は、肝臓の過度な興奮を抑えつつ、自律神経の安定を促し、血液の補給と気のめぐりを改善することで、イライラや怒り、緊張などを和らげ、良質な睡眠状態に導きます。
【症状タイプ別・不眠症改善】5つの生活習慣アドバイス
質の高い睡眠を得るためには、生活のリズムを整えることも重要です。以下には5つの生活習慣アドバイスをご紹介しますので、実践してみることをおすすめします。自分に合った順番で取り入れてみてください。
規則正しい生活と食事を心がける
睡眠の質に関係なく、起床時間を大幅に変えないように心掛けましょう。そして朝起きたら、最初に太陽の光を浴びることをおすすめします。太陽光に触れることで体内時計がリセットされ、自然に夜に眠くなるリズムが整います。また、食事も朝昼晩の3食を規則正しく摂り、栄養のバランスにも注意しましょう。
就寝前に喫煙やカフェインをとらない
睡眠を妨げる原因となるため、寝る前の喫煙は避けるべき習慣です。同様に、カフェインの摂取も就寝前3〜4時間は控えることが望ましいです。カフェインは入眠を妨げたり、睡眠の質を低下させる可能性があるため、睡眠前には控えましょう。
日中、適度な運動をする
運動はストレス解消や自律神経の調整に役立ち、良質な睡眠を促す効果があります。ウォーキングや軽いランニングなど、負荷の少ない運動を長期間継続することができる習慣を取り入れてみましょう。
寝る前にスマホを見ない
テレビやスマホ、パソコンは注意が必要です。これらのデバイスは脳を刺激し、寝る直前まで使用すると眠気が抑えられる可能性があります。就寝の1時間前には使用を控えるよう心がけましょう。
ぬるま湯で入浴
入浴は、寝る前の2時間ほど前に行うのがベストです。ぬるめのお湯(約38〜40℃)にゆっくりと25〜30分ほど浸かることで、より良い睡眠効果が得られるとされています。
よく眠れない方は、一人で悩まずに専門の医療機関を受診することをおすすめします。そこで不眠の原因を明確にすることができるかもしれません。
不眠の背後に別の病気が潜んでいる可能性もあります。
当店では、個々の体質に合わせた漢方薬を提供しています。
自分に最適な漢方薬について相談してみることもおすすめです。
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