漢方の物差し「陰陽五行説」とは

漢方の物差し「陰陽五行説」とは

カラダを健康に保ち、病気を予防するためには、自分自身のカラダについての知識を持つことが重要です。

そのためには、漢方医学の観点から「陰陽」「気血水」に続く次の重要な要素として「五行」があります。

この概念は、カラダを支える5つの重要な要素を評価するための指標となります。

気血水の3つの要素と同様に、これらの5つの柱がバランス良く整っていることが、健康なカラダを維持するために必要です。

そこで今回は、「五行陰陽の特徴」などを紹介します。健康なカラダを維持するために必要なポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

目次

陰陽五行説とは

「陰陽五行説」とは、「陰陽論」と「五行説」という2つの概念からなる考え方です。

これは漢方医学の基本的な理論であり、これらを身体の機能に応用したものが「五臓」として表現されます。

私たちの身体は「気血水」という3つの要素で構成されており、それぞれのバランスが健康を維持する上で重要な役割を果たしています。

また、「五臓」とは身体を5つの「機能系」に分け、相互につながり合っているという考え方です。

陰陽論

「陰陽」とは、自然界のありとあらゆるものを二つの相反する要素で捉える考え方です。これは相互に対立し、互いに依存しながら絶えず変化している関係性を指します。

【五行説】五行の考え方

「五行説では、5つの要素が相互に影響し合いながら、バランスを保つことで全体が調和していると考えられています。それぞれの要素が互いの性質を助け合ったり、相殺しあったりすることで、全体の調和を実現しているのです。

五臓の特徴

「五行説」の応用として、身体の機能を五つの要素に分けたのが「五臓」の考え方です。

これによれば、身体の機能は「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」の五つの機能系に分類されます。

これらの機能系は、「木=肝」「火=心」「土=脾」「金=肺」「水=腎」という五行との関係性に基づいています。

そして、各機能系はお互いに助け合ったり制御しあったりしながら、バランスを保つ役割を果たしています。

「五臓」の理解にあたって注意が必要なのは、「肝」や「心」といった概念が、直接的に「肝臓」や「心臓」と一致するものではないということです。

漢方の「五臓」は単に内臓の働きを指すだけでなく、それらの機能を含めたより広い意味合いを持っています。

「肝」

  • 血液の循環や物質の代謝、熱の発散や体内の有害物質の排泄、解毒などを調整する役割を担います。
  • 感情や精神の面での安定や調節を行う役割があります。
  • 血液を貯蔵し、身体の栄養や水分のバランスを維持する役割を果たします。
  • 肝臓や胆嚢のみならず、爪や目、涙、筋腱などもこの機能系に関連づけられます。

「心」

  • 血液の循環や心臓の拍動を制御する役割があります。
  • 脳の機能や精神活動を調節する役割を担っています。
  • 心臓や小腸だけでなく、顔面の表情や舌の状態、汗や脈拍などもこの機能系に関連づけられます。

「脾」

  • 栄養の消化と吸収を管理する役割があります。
  • 血液の循環を調節し、漏れ出さないように維持する(統血)役割を担っています。
  • 脾臓や胃だけでなく、筋肉や四肢の働き、口や唇の状態、唾液などもこの機能系に関連づけられます。

「肺」

  • 呼吸の制御を担う役割があります。
  • 体内の水分の循環を調整する役割を果たします。
  • 免疫機能や防御機構をコントロールする役割があります。
  • 肺や大腸に加えて、皮膚や体毛、鼻、喉、気管支、音声などもこの機能系に関連づけられます。

「腎」

  • 生命力の蓄積を担う役割があります。
  • 生殖、成長、発育、老化の調整をコントロールする役割を果たします。
  • 体内の水分の代謝を調節する役割を持っています。
  • 腎臓や膀胱に加えて、脳、骨、骨髄、耳、泌尿生殖器、肛門、毛髪、唾液などもこの機能系に関連づけられます。

「陰陽五行」で分かるカラダの傾向

五行理論を用いた5本柱の視点から、以下のようなカラダの「特性」(体質)を把握することができます。

  • 起こりやすいトラブルや健康上の課題
  • 症状が現れやすい部位や器官
  • 影響を受けやすい要素や環境
  • 適した食べものや食生活の傾向

陰陽五行とカラダの特徴

「肝のトラブル」

肝のトラブルが起こると次のような症状が出やすくなります。

  • イライラが生じやすい傾向がある
  • 脚がつりやすく、しびれを感じやすい
  • 情緒不安定になりやすく、気分の浮き沈みがある
  • 脚の静脈が目立つことがある
  • 不眠や夢遊病の傾向がある
  • 胸や脇が張って苦しいことがある
  • 朝の寝起きが悪く、だるさを感じる
  • お腹が張り、ガスが多く発生する

「心のトラブル」

心のトラブルが起こると次のような症状が出やすくなります。

  • 動悸や息切れが起こりやすい傾向がある
  • 不安感や焦燥感が強く現れることがある
  • 脈が乱れやすいことがある
  • 胸のあたりが不安定でハラハラすることがある
  • 胸が苦しく、圧迫感を感じることがある
  • 感情的に興奮しやすい(ヒステリー気質)
  • 胸のあたりに鈍い痛みを感じることがある
  • 異常に多く汗をかいたり、冷たい汗をかきやすい

「脾のトラブル」

脾のトラブルが起こると次のような症状が出やすくなります。

  • 食欲が低下することがある
  • 疲労感を感じやすい傾向がある
  • 食べ物が消化しづらく感じることがある
  • 気力が出にくい状態が続くことがある
  • 食後に胃が膨満感を感じることがある
  • 顔色が良くない(蒼白な状態)
  • 胃が重くだるく感じることがある
  • 疲労感が増すと甘いものへの欲求が高まる
  • 胃がもたれやすい状態がある
  • 体重が減りやすい・食事をしても体重が増えにくい
  • むかつきや吐き気があることがある
  • 思い悩みやすく、思い込みが強い傾向がある

「肺のトラブル」

肺のトラブルが起こると次のような症状が出やすくなります。

  • 風邪を引きやすい傾向がある
  • 呼吸に苦しさを感じることがある(呼吸困難・喘息)
  • 感染症にかかりやすい体質である
  • 肌の色が薄い傾向がある
  • くしゃみが出やすい
  • 肌が薄くて敏感な傾向がある・敏感肌である
  • 鼻水や鼻づまりが頻繁に起こる
  • 肌が乾燥しやすい傾向がある
  • 痰がよく出るまたは痰が詰まることがある
  • 肌が荒れやすい傾向がある
  • アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状がある
  • 蕁麻疹が出やすいまたはアトピー性皮膚炎の傾向がある

「腎のトラブル」

腎のトラブルが起こると次のような症状が出やすくなります。

  • 疲労感を感じやすい
  • 歯の強度が低く、揺れやすい傾向がある
  • 身体がだるく、力が入りにくい
  • 骨の脆さが見られる □ 免疫力が低下している傾向がある
  • 頻繁に頻尿になる
  • 体温が下がりやすく、冷えを感じやすい
  • 夜中に何度もトイレに起きることがある
  • 顔色が暗い(くすんでいる)
  • 残尿感を感じることがある
  • 髪の抜け毛が増えている傾向がある
  • 膀胱炎にかかりやすい
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この記事を書いた人

KAMPO楓堂 代表

国際中医師・国際中医薬膳師
温活指導士・温活薬膳料理士
登録販売者

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