不眠・不眠症

目次

不眠・不眠症とは

不眠症は、睡眠のリズムが乱れているために眠れず、浅い睡眠で目が覚めたり、早朝に目覚めてしまったりする状態を指します。これらの不眠症状が一時的なものではなく持続する場合、慢性的な不眠症となります。

不眠・不眠症の治療

漢方薬は、睡眠薬とは異なり、直接的に眠りを誘発する働きはありません。むしろ、不眠の原因を取り除くことで自然な形で睡眠に導いてくれるため、睡眠を促進する効果があります。

病院での診察

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法が用いられます。この診察では、一見するとご自身の症状とは関係のなさそうな質問や、お腹や舌、脈の診察が行われます。これは、不眠症の影響がどの部分に及んでいるのかを探るために必要な診察方法です。

私たちの体は自然に朝に目覚め、夜に眠るという睡眠リズムが備わっています。しかし、このリズムが乱れると眠れなかったり、浅い睡眠ですぐに目が覚めたり、早朝に目覚めてしまう状態が不眠と呼ばれます。不眠症は一時的なものではなく、持続的に症状が現れる場合を指します。不眠症の治療にはまず、不眠の原因を取り除き、良い睡眠環境を整えることが重要です。それでも十分な睡眠が得られない場合には、睡眠薬などを使用して眠りを促すことも考慮されます。

不眠・不眠症のメカニズム

睡眠には個人差が大きく、眠りの必要時間も人によって異なります。例えば、5時間で十分と感じる人もいれば、8時間眠わないと満足感を得られないと感じる人もいます。ですから、不眠とは特定の時間基準で決められるものではありません。不眠とは、眠れなくて苦しいという状態です。つまり、睡眠時間に関わらず、眠れないと悩んでいることが不眠の特徴なのです。

不眠症とは
  • 就寝時になっても眠れず、苦しい思いをしている。
  • 夜中に何度も目が覚めてしまう状態になっている。
  • 眠っている間も熟睡感を得られない。
  • 朝早く目覚めてしまい、その後眠りに戻れない。
  • 眠りが浅く、中々深い眠りに入れない。
  • 睡眠時間が短く、充分な休息を得られていない。

不眠症には、入眠困難を指す「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう状態を指す「途中覚醒」、そして早朝に目覚めてしまう状態を指す「早朝覚醒」という専門用語があります。

不眠症の原因としては、環境的な要因(騒音や明るさなど)、精神的な要因、肉体的な要因(痛みなど)、病気、薬物や成分の影響(カフェインやアルコールなど)、年齢などが挙げられます。特に最近では、ストレスが精神的な要因として関与しているケースが増えています。また、心の病気が不眠症の原因となることもよく見られます。うつ病では入眠障害や早朝覚醒が、神経症では入眠障害や途中覚醒がよく見られる心の病気の一例です。

不眠・不眠症の治療、薬物治療

不眠症を克服するための最初のステップは、不眠の原因を解消し、快適な睡眠環境を整えることです。

睡眠のポイント
  • 自分に合った寝室や寝具を整える。
  • 規則的な生活リズムを保ち、同じ時間に床に入る習慣を身につける。
  • 入眠前にストレッチや温かいお風呂に入るなどのリラックスする習慣を取り入れる。
  • リラックスできる状態になるよう心掛ける。
  • カフェインを摂取しない。
  • 目覚めた後はできるだけ明るい光に当たり、夕方以降は光を避ける。
  • 昼間は積極的に活動する。

もしも上記の方法でも眠れない場合は、医師の指導のもとで睡眠薬(一部では睡眠導入薬とも呼ばれます)の使用が検討されることがあります。ただし、睡眠薬の種類は不眠のタイプや症状の重さ、原因などに応じて選ばれます。以前は、量を増やさないと眠れなくなったり、薬をやめられなくなったりするといった問題がありましたが、最新の睡眠薬は自然な眠りに近い効果を持っており、これらの問題点が改善されています。また、不安が強い場合には抗不安薬の使用も考慮されることがあります。

漢方薬による治療

漢方医学の古典書『金匱要略』には、「疲労による不眠の場合、酸棗仁湯が効果的である」と記載されています。これは一つの例であり、他にも不眠症に効果のある漢方薬が存在します。

漢方医学では、「気・血・水」という考え方があります。不眠症の原因によって異なる背景を考慮し、気の流れが滞っている場合は気の流れをスムーズにする処方、イライラして眠れない場合は気分を落ち着かせる処方などが処方されます。漢方薬は、直接的に睡眠を誘発する目的ではなく、不眠の原因を解消することで自然な形で睡眠を促す役割を果たします。漢方医学では、実証や虚証などの診断結果を考慮して、適切な漢方薬が選ばれます。

不眠治療に用いられる漢方薬の例

実証

漢方薬 効果効能
黄連解毒湯(おうれんげどくとう) 体力中等度以上で、のぼせ気味で顔色が赤く、いらいらして落ち着かない傾向の方の不眠症、神経症など
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう) 体力中等度以上で、のぼせ気味で、精神不安、みぞおちのつかえなどある方の高血圧の随伴症状(のぼせ、不安、不眠など)、更年期障害など
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 体力中等度以上で、精神不安があって、便秘などがある方の高血圧の随伴症状(不安、不眠など)、神経症など

中間症から虚証

漢方薬 効果効能
加味帰脾湯(かみきひとう) 体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪い方の不眠症、精神不安など
加味逍遙散(かみしょうようさん) 体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすすく、精神不安などがある方の不眠症、更年期障害など
帰脾湯(きひとう) 体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪い方の不眠症、精神不安など
抑肝散(よくかんさん) 体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、いらいらなどある方の不眠症、神経症など
酸棗仁湯(さんそうにんとう) 体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安などがある方の不眠症、神経症など
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう) 体力中等度以下で、冷え症、貧血気味、神経過敏などの方の不眠症、神経症など

漢方医学では、女性にはしばしば加味逍遙散が使用され、子供の夜泣きや不眠には抑肝散が頻繁に用いられます。

漢方薬の利点は、単に眠りを改善するだけでなく、不眠に関連する冷えや疲労、めまいなどの症状を緩和することも可能であることです。さらに、西洋医学の薬と併用することで、睡眠薬の効果を補完することがあります。また、睡眠薬の副作用による口の渇きや疲労感を和らげるためにも使用されることがあります。

漢方の診察では、特有の「四診」と呼ばれる手法が用いられます。一見、症状と関係のないように思える質問や、腹部や舌、脈を診察することがありますが、これらは不眠症がどのように影響を及ぼしているのかを探るために必要な診察です。もちろん、漢方治療だけに頼らず、睡眠環境の整備などの不眠症対策も重要です。

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この記事を書いた人

KAMPO楓堂 代表

国際中医師・国際中医薬膳師
温活指導士・温活薬膳料理士
登録販売者

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